楠木 建さんの著書「好きなようにしてください」を読みましたので感想書きます。
お堅いビジネス本かと思いきや、ゆるくも芯の通った仕事観が満載の1冊でした。
自己啓発ビジネス書と思いきや…
本書の煽り文がこちら。
人生はトレード・オフ。その本質は「何をやらないか」を決めること。環境の選択は無意味。「最適な環境」は存在しない。趣味と仕事は違う。自分以外の誰かのためにやるのが仕事。仕事にどのように向き合うか。仕事の迷いに『ストーリーとしての競争戦略』の著者が答えを示す!
…でたよ。「好きなことで生きていく」やら「行動あるのみ」的な、読みやすくて心は動かされるけど中身ペラッペラの自己啓発ビジネス書だよ。
こちとら夢を叶えてくれそうなゾウとかユダヤ系お金持ちとかから学んでんだよ。
自己啓発ビジネス書から得られるのは「数日間しか続かない万能感」くらいだってな!
まぁ自分のせいなんですけどね。とか思いつつ買っちゃいました。
けど!
中身は!
思ってたのと全然違った!
ほぼ全ての悩みに「好きなようにしてください。」
本書はNewsPicksの連載「楠木教授のキャリア相談」をまとめたもので、読者から寄せられた50の質問に対して著者が回答する、という構成になっています。
キャリアプラン、職場の人間関係から夫婦間、子育ての悩みまで、一見しょうもないけれどもよく陥りがちな悩みにことごとく「好きなようにしてください。」と回答する楠木教授。
一見すると雑に見えますが、冒頭にある
言うまでもなく、仕事や仕事生活というものは優れて個人的な問題です。人によって好き嫌い、得手不得手は異なります。一義的に良い悪いで片付けられる問題ではありません。
くわえて、相談文はごく短い、あっさりとしたものが多い。相談者の人となりや置かれている状況もよくわかりません。想像の上に推測を重ねなければ回答のしようがないのです。
という前提。
結局のところ、「好きなようにしてください」としか言いようがないわけです。
で、この「好きなようにしてください」に続く余談がすごくおもしろい。自分にも当てはまるけれども、なんだかなぁ…とモヤモヤする悩みを”ゆるく切る”感じが新鮮でした。
意識高い系を”ゆるく切る”爽快感!
いい感じのやり取りを1つ紹介します。まず質問。
広告代理店に勤務する三〇代半ばの人間です。会社は大手で安定しており、仕事内容も、大きな不満はありません。給料面でも他業界で働く同世代に比べれば、恵まれています。
ただ、不満がないのが不満といいますか、毎日、同じような日々が続くだけで、自分が成長している気がしません。
(中略)
このまま、リスクをとらないクライアントに尽くすよりも、自らプレイヤーになって、事業会社に移って、マーケティングを実践する立場に変わった方がいいのではないかと思い始めています。
回答がこちら。
好きなようにしてください。あなたの症状は、一言で言えば「NewsPicksの読みすぎ」です。「不満がないのが不満」と言うだけに、そもそもやたらと漠然としたご相談です。
(中略)
自分の仕事に正面から向き合う。それは自分を向くということではありません。自分が役に立とうとする他者を向くということです。自分以外の誰かのためになってこその仕事。自分のために自分を向いてやるのは趣味。趣味は家でやりましょう。仕事で自分を向きすぎると、この手の無意味な悩みに陥りがちです。
悩みなのか自慢なのかよく分からない質問を”ゆるく切り”、「仕事の本質」を説く楠木教授。惚れ惚れしますね!
NewsPicksのメイン読者は、いわゆる意識が高い系ビジネスマン。本書を読んでいると、どうもはてな村と同じかそれ以上にメンドくさい人が多い印象です。
他にも、
- 大企業とスタートアップで迷っています
- 「プロ経営者」にどうすれば最短距離でなれますか?
- 「器用貧乏」な自分が嫌。専門性が欲しい
- 頑張っても評価が低くて、やる気がなくなりました
- 社会人大学院が良いの部下が、戦力にならない
といった、一見しょうもないけれどもよく陥りがちな悩み。「好きにしてください」としながら本質を突いたゆるい答え。
新しい形のボケとツッコミが新鮮でページをめくる手が止まりません。
楠木教授が説く「仕事の原則」とは?
本書の秀逸さは、回答の根底にある楠木教授の仕事観にあります。その一部を紹介します。
- 環境評価、環境比較には意味はない
- 「営業力」は究極の能力
- 攻撃してくるのは暇な連中
- 「派閥」はたかが知れている
- 実際のところ、誰も頼んでいない
- 実績こそが実在
- 世の中のことはほとんどすべて相互選択
- 上司の仕事のコアは部下を成長させ、戦力にすること
などなど。目からウロコが落ちまくること請け合いです。
また、中盤のコラムに挙げられた10の仕事の原則。これを読めば、仕事のムダな悩みをゼロにできると思います。実際僕もいくらかラクになりました。
気になる方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。
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